あの日ぼくらが信じた物
 どうやらぼくは寝てしまっていて、父がベッドに運んでくれたらしい。


「みっちゃんとはもう仲直りも出来ないんだから、結婚なんかする訳無いじゃないか!」


 そんな夢を見てしまった自分を責めるように心の中で叫ぶと、ぼくの頬に何かが伝っていくのを感じた。


「涙?」


 ぼくはなんで泣いているのだろう。悲しい夢じゃ無かったのに。


「そんな筈はない。どうして泣かなきゃいけないんだ」


 慌てて袖で頬をしごくと、またタオルケットを被って丸まった。


「一度寝てるから目が冴えちゃったよ。ああ、空が青くなってきてる」


 でもどうにか朝焼けを見る前に、ぼくは眠りに就けたようだった。



翌朝───────



  コォケコッコー



 近所で飼っている尾長鶏が鬨トキの声を上げた。


「もう昼か。今頃みんなは昼飯かな」


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