SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

◇夏休みと縁側と探し物

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あれから間もなく、学校は長い夏休みに入っていた。

あたしにはヒマなだけの夏休み。

家には黒木とユリがいるものの、あたしとはすれ違いの生活だ。



PSY絡みの事件は何故か夜に集中する。

最近も夜に出かけ、朝方に帰り、昼間は睡眠という昼と夜逆転の生活スタイルが当たり前となっていた。

夕方まで二人は寝てるから、昼間、特に何もする事がないあたしは、しょっちゅう湧人の所に入り浸っている。

今日も、風通しの良い縁側に座りながら、あたしは机に向かう湧人の背中を見つめていた。



「 ゆうと? それ、夏休みの宿題?」


「 うん。自由研究 」


「 ふ~ん 」


湧人はよくここで勉強する。
縁側にはいつも銀の小さなテーブルが置かれていた。

ヒョイと体を傾けて、机に広げられた分厚い本を盗み見る。


……あ。


「……てんぐ 」


本にはでかでかと、赤ら顔で鼻の長い、いかめしい顔の天狗の写真が載っていた。


「 うん。オレさ、みくの話聞いたら天狗が頭から離れなくなったんだよね。だから、とことん調べようと思って 」


「……へえ 」


「 みくと融合したの、たしか伯耆坊って言ったよね。これによると日本八大天狗の一人で…… 」


湧人はパラッと本のページをめくって見せる。


「……っ⁉︎」


あたしはギョッとした。

そこに載っていた写真は、赤い顔に黄色の目とクチバシ。全身黒い羽毛で覆われた姿。

まあ、黒い翼っていうのは同じだけど……


「 ちがうよ、湧人。こんなんじゃない 」


あたしは思わず口を出す。


「……なにが?」


「 伯耆坊。あれはもっと、違う顔 」


「……どんな?」


「 きれいな顔。湧人みたいな 」


「…………」


湧人がきょとんとした顔をする。
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