SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


——ゾク!


背中の上の方に寒気が走る。

後ろから誰かの鋭い視線を感じた。


「…………」


ゆっくり後ろを振り返る。

すると、部屋の隅にスーツを着た若い男が立っていた。

この世のものではない……


『……う゛う゛……』

……ズル、……ズル……

血走った目を見開いて、男はゾンビのように歩いてくる。


『……う、う゛う゛…… 』

……ズ、……ズル、ズル……


恨みつらみの怨念を、全部あたしにぶつけてくる。


『 う゛う゛う゛う゛~っ!!!』


男が掴みかかってきた。


「…………」


あたしは、


"バチ——ンッ!!"

『 ヒッ!』

"数珠"で男を蹴散らした。

 
「……はぁ、」


……そう。

あたしはこの時期、多くの“霊” に遭遇する。

ESPのスイッチを切っていても、ふとした時に視界にソレが映り込む。

お盆の月だからなのか、なんなのか。

とにかく、あたしはちょっとだけ8月が苦手だった。
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