SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

そのまましばらくじーっと見守る……


じーっとじーっと見守っている……


……あれ。 なにか、忘れてる?


……う〜ん……?


「そうだ水! 湧人!」


水を手に、あたしは急いで二階へ駆け上がった。


——バンッ!

「湧人っ! 水だよっ!」

“……ブワッ!”

ドアを開けた途端、激しい熱波に襲われた。


「あつい!」


……なに⁉︎ 一体どうしたの⁉︎


「……あ、」


やっと気がついて上を見る。

冷房ではなく、何故か暖房がついていた。

……っ、

おそろしいほど部屋が煮えたぎっている。


「……う゛ん……う゛~ん……」


苦しそうな湧人……


「湧人!」

あたしは急いでエアコンのスイッチを切る。

窓を開けて部屋の空気を入れ替えた。


「湧人、水!」


汗だくの湧人を抱き起こし、体を支えて水を飲ませる。

湧人はそれを一気に飲み干した。


「ごめん湧人。冷房、つけられなくて……」


すると湧人はまたあたしをぼ~っと見る。

力のない手をのばし、あたしの手からリモコンを取ると “ ピピ!” とそれを操作した。


——パタン。

力尽きたように湧人がベッドに横になる。

そのまますぐに眠ってしまった。
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