SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


「……ん? ……どうした?」


黙ったままのあたしに透が顔を近づける。


「……あ、」


そのまま見つめ合っていると、


——ドカッ!


乱暴に、湧人が間に割り込んだ。


「……おわっ! なんだよっ!」

「……べつに」


湧人はツンと前を向き、透は体をのけぞらせる。


"ジー! ジジーッ!"


一斉に庭から虫が鳴き始めた。


「……?」


……変なの。

透と湧人はいつもこうだ。

言葉や態度がトゲトゲしい。


「みくは、一人で寂しくない?」


ふと、湧人があたしに聞いてきた。


「あ~。寂しいはよく分からない。でも広すぎマンション心がヒュウ~ッてここにいる方が何度か別に平気で何となく落ち着く」


思うままにあたしは答える。

すると、


「……っ、おまえ! なに言ってっか分かんねーよ!」

「そっか。じゃあ、みんなが戻って来るまでココにいればいいよ」


透は怒り、湧人は少しあたしに微笑んだ。



「……は? おまえ、今のコイツの説明分かったのかよ⁉︎」


「あたりまえだろ? "寂しいかは分からないけどマンションは広すぎて、一人だと心がヒュウ~ッてなる事がある。ココにいる方が落ち着く” みくはそう言ったの。お兄さん、ちょっと理解力が足りないんじゃない?」


「……ああ⁉︎ なんだとコラ!」


透は大きな声を出す。

湧人をギロッと睨みつけた。


「……どうしたの?」


あたしは湧人と透を交互に見る。

いつも以上に二人は何かギスギスしていた。


「……ったく、何でもねーよ!」


透はスイッと視線を外す。


「……ハア~。 ほんと、ずいぶん仲良しなんだな。ガキ相手に、こっちがムキになっちまう」


「ガキじゃないしっ!」


「ああ、そうかよ」


透はふうっとため息をついた。
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