SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

◇黒パーカーの男


————次の日の朝。


あたしはアジトの裏手にある小さな公園に来ていた。

理由はさっき届いたこのメール。


“裏の公園に来い”
“お前の実力を見ておきたい”


差出人は"ゴミ屋さん"

一体なんの実力だろう。

もしかして、ゴミ拾いの実力だろうか。


気になったあたしは言われた通りここへ来た。

片手にホウキと、一人男を引き連れて。



“……ヌボ〜……”


この、ひたすらボーっとした色白のヒョロヒョロ男。さっき無理やり起こして連れてきた。

だって、一人で出歩くのはダメだと、陽菜があたしに言ったから。

男も奏太の家で暮らしてる。

朝に弱い扇龍だけど、こいつの場合、朝昼晩、なんだかいつも眠そうだ。


……まったく。


ご飯の時だけはシャンとして、ガツガツ人の分まで食べるのに。


「あたしそうじする。終わるまで待ってて」


そう言うと、男はベンチに横になる。

すぐにイビキをかいて寝始めた。


……さて、


あたしはぐるり公園を見渡す。

見たかんじ、そんなに散らかってはいないけど……


——ザッザッ……


取り合えず、落ち葉や小石をはいてみる。

土ぼこりが舞い上がり、たちまち辺りが白っぽくなった。


「…………」


少しして嫌な気配に手を止めた。

感じたことのある気配……

これは——、


「……あ、」


モヤの中に三人の男。

バキがそこに立っていた。


……なんだ。


なかなか来ないと思ったら、今ごろ少しやって来たのか。


「「「……てめえっ!!」」」


怒りをあらわに、男たちが近付いてくる。


——サア~……


視界が晴れたその直後、


——パアンッ! ドカッ!


頬に平手が、体に蹴りが飛んできた。
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