SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

伯耆坊は、そんな男の様子を気にする事なく、離れた男の手を再び自分の手とつないだ。


「 なっ!」

それを振り払おうと男は抵抗をみせている。


……が、すぐに男は静かになった。


男は何か探るように伯耆坊と視線を合わせ、驚いた顔で目を見開いたり、眉間にしわを寄せたりを繰り返している。伯耆坊もジッと男を見つめていた。

二人の間に無言の時間が流れる……


やがて二人の手が離れると、今度は男の視線があたしとぶつかる。


「……信じられない 」


男は呆然とした様子で、そんな事をつぶやいた。
< 39 / 795 >

この作品をシェア

pagetop