SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

◇同居人

———————————————
———————————————


「……だり」


「…………」


やっと四日間に渡る中間テストが終わり、あたしは透と帰り道を歩いていた。


「……あ〜、だり」


テストからの解放感から一変、

透が不機嫌なのは、さっきユリから透に電話があったから。


「つーか、なんでオレまで知らねえ奴の歓迎会なんか……」


「…………」


「……で、どんな奴なんだ? その新しい同居人ってのは」


「……よく、分からない」


「……は?」


透は眉間にシワを寄せた。



10月、あたしの住む環境にも変化があった。

マンションに最近、新たな同居人が加わったのだ。

やっと引っ越しの片付けが終わり、明日から二連休という事もあって、今日はその同居人の歓迎会をやる事になっていた。


——ガチャ、


玄関を開け、透と共有リビングルームへ歩いていく……


「——ユリ姉さまと誠兄さまがと〜ってもと〜っても大好きですぅ〜!」


コロコロした高い声が聞こえてきた。



「ユリ姉さまの心の回復術、誠兄さまのヒーリングのお力……。そして、先日のお二人の銃さばきには本当に感心致しました!

わたくしはお二人こそがD.S.Pの陰の立役者と……

ユリ姉さまと誠兄さまがいなければD.S.Pは成り立ちません!」


「「……サヤ……」」


「さあ、カモミールティをどうぞ。お仕事で疲れた心と体をリラックスさせてくれますよ?」


「サヤあああ〜! オマエはなんてい〜ヤツなんだあ〜!!」

「サヤ! 私たちの事、本当のお兄ちゃんとお姉ちゃんと思っていいのよ!」


目をウルウルさせ、二人は少女を抱きしめる。


「キャ! お二人とも苦しいですわ〜!」


——パチ!

その少女、黒髪ツインテールと目が合った。
< 573 / 795 >

この作品をシェア

pagetop