SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

「うん。本当に大丈夫」


「…………」


「いつき?」


すると一樹はハア〜と息を吐く。


「……そうですか。どうやら、わたしの取り越し苦労だったみたいですね。 ……すみません、変に深読みしてしまうのがわたしの悪い癖でして」


安心したような、少しバツの悪い顔をした。


「ううん」


やっとこわばっていた空気が緩む。


——カチャ、


一樹は再び紅茶に手をつけた。


「でも安心しました。返答次第では、わたしがあなたを……」


「うん?」


「あなたを、ここから連れ出そうと思っていましたから」


「…………」


……連れ出す?


「連れ出すって、どこに?」


「気分転換にドイツへと」


「ドイツ?」


「要らぬ世話だったようですが」


一樹はクスリと微笑んだ。


「…………」


あたしは少し黙り込む。


「……美空?」


「あたし、どこにも行かないよ?」


「ええ、それはもう、」


「パッタリしない言ったから」


「……はい?」


「寂しいんだって。パッタリすると」


手首につけたパワーストーン。

連なった薄い水色の珠をなでながら言った。
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