SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

◇侵食する者される者

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「「……ハアッ、ハアッ、」」


息を切らし、透と薫は走っていた。

目指すのはもちろん湧人の家。


“ 美空は悪い奴じゃない ”


その思いを胸に、また、思いを確信へと変える為に二人は町を走り抜ける。

気が急いているせいか、やけに距離が遠く感じた。


「——⁉︎」


先に異変に気付いたのは透だった。


「……ハアッ、ハア、」


足を止め、息を整えながら、周りの景色に意識を向ける。


「……⁉︎ お兄ちゃん?」


薫が気付いて立ち止まり、後ろの透に振り向いた。


「どうしたの?」


「……あ、 ……ああ、」


透は不思議そうに真横にあるクリーニング店を見つめている。


「……なあ、さっきもココ通らなかったか?」


疑問を薫に投げかけた。


「……え?」


言われて薫もそこを見る。
ピンクの看板のどこにでもあるクリーニング店。

ただ、店の壁にはイタズラによる落書きの跡が数日前から目立っていた。

何かのロゴマークのような特徴的なその落書き……

そう言われれば——、 でも、


「何言ってるの、そんな訳ないじゃない」


薫は否定の言葉を口にした。

そう、二人は大通り沿いにまっすぐ道を走って来たのだ。同じ場所を通る訳がないし、まして迷うなんてはずもない。
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