雪に塩
「けど、早いなぁー。あれからもう7年になるのね。」



ジャネの法則のように、杠は思い出す。



7年前、ヤンキーに絡まれた自分を守ってくれた1人の不良がいた。


しかし工事現場で偶然見付けた、報復に来たヤンキーと不良の喧嘩。


その時にはずみで倒れてきた鉄パイプの下にいた不良を、咄嗟に庇い頭を怪我したことが視力を失う原因になった。



だが病院へピアノを弾きに来ていた女性と出会い、杠の未来は決まる。


幼少期に習ったピアノは体が覚えていて、1年間休学してしまったが勉強しピアノ専門の高校へと進学出来た。



更に女性の紹介で、林残で弾かせてもらえるようにもなった。



「まさかその女の人が、竺牽捏さんの奥さんだったなんて。凄い偶然よね。」



妻は放浪癖が有り、今は海外でリサイタル公演などをしているらしく、時々各地から手紙や土産が届いている。





‥‥砂に描いた未来への地図。


拒む様に風が吹き消したとしても、見上げた空には弱くも輝く道標。



終わりの無い闇夜を壊して、叫びをかき集めた欠片で繋げる。




絶望なんて役不足で大したこと無いと、



涙を抗う武器へと変えた。‥‥
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