心外だな-だって世界はこんなにも-





「さ、聡くん……。」



俺は息を整えて、言った。



ずっと言えなかった、ずっと言わずに美紀に甘えてきた言葉、想いを、こんな場所、世界の中心ではないだろうけど、かまわず、ブラジルの人にも届くように、叫んだ。



「美紀! 好きだああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」



周りの目なんか気にしない。誰に聞かれたっていい。俺は美紀が好きなんだ。好きで、好きで、好きで……。



純粋な気持ちを、濁りのない気持ちを、愛を叫んで何が悪い?



「俺、美紀のこと、好きだから。そりゃ、付き合う時は戸惑ったけどさ。よく『私のこと好き?』って訊かれても、誤魔化してたけどさ。それは照れなんだよ。ただ照れて言えなかっただけなんだよ! でも、言う。言わなきゃ伝わらない。きっと、今言わなきゃ俺は絶対に後悔する。そして、美紀を後悔させてしまう。」



途中から自分が何を言っているか、考える暇もないくらい、プライドも、恥も捨てた。考えなくていい。考える時間があったら、その数だけ「好きだ」って叫びたい。



「だから、俺は美紀のこと好きだから。さっき、別れたばっかりだけど、もう一度こんな俺と付き合ってくれませんか?」



頭を下げて、差し出した右手には花束はない。普段は、花束を女に贈るような男をキザだって馬鹿にしてた俺だけど、今は花束一つ渡せない自分が情けなかった。



でも、カッコ悪くたっていいじゃないか。それだけ好きな人がいるってことはいいことじゃないか。



カッコ悪くて、カッコいいじゃないか。




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