心外だな-だって世界はこんなにも-
白銀に染まった夜
祭は中庭に来なくなった。
なぜ来なくなったことを知っているかと言うと、俺は毎日来ているからだ。
毎日、毎日、ベンチに座って、本を読みながら待っている。
ある日、祭がひょいっと現れ、「待たせたな!」と言ってくれるんじゃないだろうかと信じているのだ。
でも、祭は来ない。信じている俺からすれば、裏切られた日数が重なっていくだけで、でも、信じてもらうには自分から信じるしかない。
俺はそれをしようとしなかった。誰かを信じることを疎かにして生きてきた。
それに祭だって、俺が待っていることを信じて、余命宣告されていながらも、一生懸命病気と闘っているはずだ。
祭が帰って来た時に、迎えてやるのが俺の役目だ。そして、一緒にやり直すんだ。
祭の失った青春を未来で取り戻すんだ。