彼の瞳に独占されています
なぜわかるの……。ホテルのアメニティーがブランド物だったことにテンションが上がって、しっかりお風呂にも入って身も心も癒したはずだったのに。

弥生ちゃんは勘が良いから、本当にこういうことには鋭い。

プライベートでも仲良くしてくれている彼女は、当然浮名さんのことも知っている。だから、話さないわけにはいかないのよね……。

あまり思い出したくはないけれど、意味なくゆるふわセミロングの髪にくしゃりと指を差し込んで、重い口を動かす。


「弥生ちゃん……昨日はデートじゃなかったのよ」

「え?」

「ていうか、そもそも私は彼女じゃなかった」


キョトンとしていた彼女は、数秒間パチパチと瞬きをして、「……えぇっ!?」と頭から抜けるような高い声を上げた。

そりゃ驚くわよね。当の私だって付き合っていると思っていたのだから。


周りの社員が、何事かとこちらに目を向ける中で、これ以上この話はしたくない。もうすぐ朝礼も始まってしまうし。

弥生ちゃんに、「詳しくはランチの時に話すから」と言い、私は急いで制服を手に取る。

タイトスカートを履き、白いブラウスの上にはダークグレーのベストを身につけ、首には桃色のスカーフを巻く。これが私の戦闘服だ。

着替えると自然と気合いが入る。「よしっ」と一言呟いて、売場へ向かった。

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