彼の瞳に独占されています
今みたいに、私の些細な変化に気付いてくれるのも、本当にすごいと思う。

改めてかけがえのない存在なんだなと実感していると、彼は自嘲気味な笑いを漏らす。


「相談されないと、萌のそばに俺がいる意味なくなっちまうんだけど」


ぱっと淳一を見上げた私は、思わず「そんなことないよ!」と声を上げていた。

私を見下ろす、切れ長の綺麗な瞳と視線が絡まり、少し胸が疼くのを感じながらボソッと言う。


「……悩みを分け合うだけが友達じゃないでしょ」


私が相談しないからって、淳一の存在意義がなくなるなんてこと、あるわけないじゃない。そんな寂しいこと言わないでよ……。

じっと私を見つめたままの瞳から目を逸らすと、七階に到着したエレベーターの扉が開いた。

淳一から先に降りてもらおうと、“開”のボタンを押していると、降りる直前に彼がこんな一言を紡ぐ。


「手塞がってなきゃ、頭撫でてやりたかったんだけどな」


ふっと笑みを見せて、さっさと催事場へ向かう彼に、また胸がきゅんと鳴いた。

もしかして、私がちょっと寂しいと思ったのが見抜かれていた? 恥ずかし……。

むず痒い気分になって、ぽりぽりと頭を掻きつつ、私も彼の後を追った。

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