ポプリ
 この星には『勇者伝説』という、お伽噺がある。

 誰にも上れないような高い塔で、ひとり泣いているお姫様。その哀しみを癒したくても、ただ、塔を見上げていることしか出来ない星の民。

 けれどもある日。そのお姫様の孤独を和らげようと、一人の男が命を顧みずに塔を上っていった。

 自分が孤独に苛まれても、疲れて倒れそうになっても。何年かかっても諦めずに、お姫様の心を救おうと塔を上り続けた男。──それは、シオンの先祖の話だ。

 偽りの物語だ。

 けれども、温かい愛情がもたらした物語。『ランスロット』の母──つまり、シオンの先祖が息子のために紡いだ物語。後に生まれてくる血族に託した、愛情と希望に溢れた願い。

 祖父は、父は、そんな『勇者』を目指した。

 祖先が望んだとおりの、友のために、名も知らぬ者のために、見返りを求めずに手を差し伸べられる、そんな『勇気ある者』を。


 勇者が求める力は、護るべき者があってこそ。

 ただ力を求めてはいけない。

 護りたいから、強くなるのだ。


 そして、ユグドラシェルの使命もこの星の守護である。

 世界を平定し、人々の心に安寧をもたらす。

 このふたつの血を受け継いだ自分が進むべき道は。

 

 真っ直ぐに前を見つめて歩き出すシオンの深海色の瞳には、真夏の太陽のように眩しい光が灯っていた。










 シオン、本気を出すの巻。

 神殿に反旗を翻すよー。(でも詳しく書く予定はないよー)





< 188 / 422 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop