ポプリ
 友人で元婚約者のマリアベルを皇太子妃に据える。ついでに他の皇族たちも、自分の好きな人と結婚出来るようにする。シオンはそう決意した。

 そのためには皇族家の団結が必須だ。まずは同年代のハトコたちに話をする。その後で親たちに相談。そして神殿を説得。

 ……どうすれば神殿を説得出来るだろうか。

 純粋なユグドラシェルを求める理由は、痛いほどわかっている。

 ふと見上げれば、皇城のどこからでも見ることが出来る起動エレベーターの鈍色の光。

 他星との交流が増えたおかげで、ミルトゥワは年々発展してきている。ただし、過度の流入は精霊たちに害があるとされているため、人も物も制限されてはいるが。

 緑豊かな、ファンタジーの世界。

 他星には人気の観光都市だ。

 そして豊富な資源の宝庫でもある。

 それを狙う者たちからは植民地候補として見られている。星際連盟の一員となり、平和条約が結ばれたおかげで今のところは平和ではあるが。

 魔族との和平が成った今、一番に危惧されるのが他星との外交だ。言葉巧みな先進星から身を護るためには、対抗できる武力が欲しい。

 その昔、この星を侵略者から命をかけて守り通した皇族たちのように、精霊の女王を召喚出来る者はこの星を護る義務がある。皇族の者しか精霊を召喚出来なくなった今は、特に強く求められている。

 だから自分たちの親はそうした。

 民のために、星のために。自分の想いを捨てて。

 でもそれに抗った人もいる。

 シオンはその人たちを、良く、知っている。


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