ポプリ
「え、えっと、わたし、どっちかなんて、選べないー。悪い女でごめんねー」

 オロオロしながらも、台詞は棒読みの花龍。

「そんな! ぼくとの永遠のちかいは、うそだったのですかぁ!」

「おれはお前を信じてたのに!」

 それに対し、ノリノリの男の子たち。

 昼ドラのような泥沼三角関係の様相を呈してきたおままごとだったが。

「いや、花龍は悪い魔女に魔法をかけられたんだ! 王子さまのキスで魔法をといてやるぞ!」

 一気にファンタジーになった。

 シオンはそう言いながら花龍の腕をぐいっと引っ張って七音から奪うと、両手で花龍の顔を挟み込み、五歳児にあるまじき熱く激しいぶちゅー。

 花龍の翡翠色の目が零れ落ちそうなほど見開かれる。そして、笑いを堪えながら子どもたちのやり取りを見ていた奥様方のいる東屋から、かちゃーん、と陶器の落ちる音がした。リィの持っていたカップがテーブルの上に落ちたのだ。

「の、野菊ちゃん……!」

 どういう教育をした、と非難の目を向ける。

 だが野菊はあっけらかんと、

「だいじょうぶだよぉ。あっちでもこっちでも従兄妹は結婚出来る法律だもん。それにあのくらい、リィちんもシンくんとしてたでしょー?」

「してないっ! 挨拶しか!」

「大丈夫ですよ、あのくらいの年の出来事など、そう覚えてはいませんから……」

 琴音がまあまあ、とリィを宥める。

 しかしその息子が今度は暴れ始めた。

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