ポプリ
「というわけで、決闘を申し込みます、兄上」

 シャンリーはくだけた喋り方と表情を打ち消して、シオンを見上げた。

「リュシアン様を手に入れるためには、私は『ユグドラシェル』でなくてはならないのです。『グリフィノー』では駄目なの。いくら神殿の目が緩んだとはいえ、民間に降婿させるとなると他家に負けてしまうもの。それにリュシアン様ほどの能力をお持ちの皇子を、神殿は手放したくないでしょう」

 一歩後ろに退き、シャンリーは強い視線を送る。

「私はリザ家を継ぎたい。決闘を受けてください」

 そこにシャンリーの揺ぎ無い意志を見たシオンは、手にしていたランスロットを強く握り直した。

「……本気でいっていいんだな?」

「もちろんです。私はリザ家当主として、星の民を護る存在となるのですから。どのような剣も受け止めてみせっ……!」

 シャンリーは途中で言葉を切った。

 シオンから強烈な覇気が噴き出したからだ。

 こんな屋内で、という思いが一瞬頭を過ぎったが、獰猛なまでに強烈な覇気の前には、何もかも吹き飛んでいった。

 風に嬲られた。

 水の香りに囚われた。

 炎に焼き尽くされる幻影が見えた。

 絶対零度の冷気が肌を焼いた。

 雁字搦めにされたように身体が動かなくなった。

 強烈な可視光線を浴びたように視界がなくなる。

 足元が揺れた。

 闇が覗く深淵から、奈落へと吸い込まれていく。

「っ……!」

 がくんと、膝が折れた。

 無様に尻もちをついて、ただ、立っているだけの兄を見上げる。

< 257 / 422 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop