ポプリ
 まるで打ち合わせたかのように軽く頷き合う二人。

 リィはその穏やかな微笑みのまま、言葉を紡ぐ。

「年頃の子のことですから、いくら最高神祇官様でもお教えすることは出来ません」

「ほう、そうですか。これは失礼をいたしました。そういえばファロン様はシオン殿下とは大変仲がよろしいと伺っております」

「ええ、そうなのです。微笑ましいことですね」

「実にそうですな」

 ふふふ、ほほほ、と空々しい笑い声が響いた。

「それでは、御子様にお会いできるのを楽しみにしております」

「ええ」

 最高神祇官はゆったりと一礼し、ゾロゾロと神官を引き連れて去っていった。

 それを見送り、シンは大きく息を吐き出した。

「……なんか勘違いしたぞ、あれ」

「そうだね」

「いいのか? 面倒なことになるぞ?」

「そう? ……私は、『何も』、言ってないけど」

 リィは悪戯っぽく微笑んだ。

「……は。ああ、そう、そういうことか」

 彼女の意図に気付いたシンも、赤い髪をくしゃりと撫でながら笑った。

 最高神祇官はリィがシンを見たことで、ウチの娘はリザ家の跡取りと結婚する気ですよ、と勘違いしてくれたのだ。

 その間、シオンに無理な縁談は来なくなる。そうやって時間稼ぎしている間に、彼には自分の進む道を決めてもらえばいい。

「あの狸が騒いだら、適当に流せばいいな」

「うん。だって私、ウチの子たちは仲良しですって、言っただけだもの。“お相手”とは、別の話」

「嘘は言ってないもんな」

 シンとリィは顔を見合わせ、クスクスと笑った。

 子どもの頃、悪戯が成功した後によくこうして笑い合ったものだと、懐かしくもなった。

 そこへ、迎えがやってくる。

「おーい」

 黒い弁髪を揺らし、手を振りながらやってくるのは覇龍闘だ。その隣には野菊の姿もある。

 シンとリィは笑みを浮かべると、軽い足取りで彼らの元へ歩いていった。












 
 親たちも子どもたちの恋を応援中。

 シンとリィの厨二臭い技名は封印した設定から(笑)




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