ポプリ
「違うよっ! セレナも母さんも勘違いしてるよ!」

 そう言っても、なんだか疑いの眼差しを向けられるノエル。彼女のものでないのなら一体これはなんなの? まさか盗んだわけではありませんよね? などと詰め寄られる。しかしノエルもこの苺についてうまく弁明出来ない。差出人不明の人から送られてきたバースデープレゼントだとも言い辛い。

 そこに救世主が現れる。

「どうしたんだい?」

 なかなかノエルが戻ってこないので、拓斗がやってきた。

「父さん! 兄さんの部屋にこんなものが!」

「拓斗さん、ノエルに注意してやってください!」

 そう詰め寄る女性陣に目をぱちくりさせる拓斗。

 彼は息子のなんとも言えない表情と苺パンツを交互に見て、何かを悟った。

「ノエル……これは、どこかでうっかり紛れ込んだものだね? もしくは誰かに押し付けられたとか?」

 やけに真剣な顔で訊ねてくるる父に、ノエルはぱあっと心が晴れる思いがした。

「と、父さん……僕には非がないって、分かってくれるの……?」

 ノエルの言葉に、拓斗は優しい目で頷いた。

 心配するな、父さんはちゃんと分かってるよ。

 そんな目だった。

「父さん、ありがとう、僕を信じてくれて……!」

「うん、大丈夫だよ、何も心配はいらない、ノエル……」

 子は父に信頼と尊敬の眼差しを向け、父はそんな子を愛情深い目で見守る。


 父子の絆が深まった、年の暮のお話。











 そしてなんの解決もしないまま終わる。





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