雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
「あの子は一人にしちゃいけないんだよ。男子とも話せないし、他の女の子ともうまくコミュニケーション取れないし」


「本当に?」


 前を向いたまま、萌果は頷く。


「だから、萌果が守ってあげなきゃ」


「そうか」


「そう! 伊万里に何かあったら、空手でやっつけられるしね」


「萌果、空手はそういう事に使うものじゃない」


「わかってるよ! お兄ちゃん」


 無邪気に笑う妹に、律樹は目を細める。いつも自分にくっついていた小さな妹が、友達を守るなんて言うようになったかと。


「あー腹減ったぁ」


「えっ、いちごのミルフィーユ食べたのに?」


「あれが呼び水になったみたいだな」


「もう、お兄ちゃんてば」


 傍から見れば仲の良い兄と妹。律樹にとってはそうでも、萌果は違った。『お兄ちゃん』としか呼べない自分の立場がもどかしく、苦しかった。

 萌果は思春期を迎えた頃、自分の気持ちに気付いてしまったのだ。兄を、兄としてではなく、一人の男性として好きだという事に――。
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