雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
 自室を出た萌果は忙しく階段を下り、お弁当を持って待っていた母に訊く。


「あれ? お兄ちゃんは?」


「律樹(りつき)なら、もう先に行ったわよ」


「えーっ。お兄ちゃんヒドイ」


「萌果がもたもたしてるからでしょ」


 母に小言を言われながらお弁当を渡され、萌果はそれを慌ててスクールバッグに入れると、弾かれた様に玄関を飛び出した。


「朝練がない時は、一緒に学校に行こうって言ってたのにぃー」


 むぅと口を尖らせ、電車通学の萌果は最寄り駅へと走る。駅に着くまでには追いつけると思っていたのに、律樹の姿は駅に着いてもなかった。
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