雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
 萌果より一本早い電車に乗り込んだ律樹。

 ラッシュの人波の中、ドアぎりぎりに押し込まれた律樹の目の前には、同じクラスの那子がいた。

 一瞬目が合ったものの、話した事のない二人に挨拶はない。しかも、こんな風に同じ車両に乗り合わせたのは初めてだった。

 そんな二人を乗せて、走り出した電車――。

 律樹はドアに軽く寄りかかり、何気なく視線を落とす。そこでたまたま見かけた出来事に、律樹は目を凝らした。

 女子高生のスカートの中へと、入っていく手。その女子高生は那子で、声も出せずにただ俯いている。
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