雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
「らしいっすね。じゃ、ごゆっくり」


「あぁ」


 帆鷹が去ってから、律樹はまた那子の事を考えていた。

 先程の那子の横顔が、音楽室でピアノを弾いていた時のそれと重なる。律樹の頭の中に、あの時の別れの曲が流れてきた。

 思っていたイメージとは、あまりにかけ離れている那子。そもそも、自分は那子の何を知っていると言うのか。話した事もまだ数えるくらいだ。

 そう思った時、律樹は一つの結論に達した。

 本当の桜川那子を知りたい。それがただの興味本位なのかはまだわからなかったが、那子の存在を少しずつ気にかけ始める律樹がいた。
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