雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
「たっくんとこんな風に歩くの何年ぶりだろ? なんか懐かしい。あの頃は私の方が背が高かったのにね?」


「ったく……十年も前の話して、自慢げに笑ってんじゃねーよ」


「ピアノって、まだ弾いてる?」


「いや、引っ越してからは全然。野球ばっか」


「そっか……」


 相槌を打って話を続けようとした千咲希は、傘が自分よりに差し掛けられている事に気付いた。そのせいで匡の左肩はびしょ濡れだ。


「たっくん、もっと真ん中で差しなよ」


 傘を持っていた匡の手に、何気なく千咲希が触れた時だった。


「ちょっとこのままじっとしてろ」


 匡は立ち止まると、千咲希をその大きな体で包む様に道路から背を向ける。

 パシャーン――。

 前からやって来た車が大きな水しぶきをあげて通り過ぎた。
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