雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
 ――な、なんでアイツがっ!?

 心で悪態を吐く夏成実の瞳には、痴漢女呼ばわりするチビザルこと功がいた。しかも、他校の制服を着た女子と二人。

 ――もしかして、彼女とか!?

 チビザルに彼女がいようがいまいが、正直どうでも良かったのだが、そんな彼女の前で痴女呼ばわりでもされたらと思うと、どうにも面倒で、夏成実は咄嗟に隠れたというわけだ。


「那子、店出よう」


「えっ? まだ一問もやってないのに!?」


「だって顔合わせると面倒な奴が来たんだもん」


 夏成実の言葉に、那子はさり気なく後ろを振り返ると、向き直って訊く。


「夏成実の知り合いって二人とも?」


「男の方。うちの学校の一年らしいんだけど、顔合わせるとつっかかってくんの。この間なんて『痴漢女』とか言われたし」


「『痴漢女』って……」


 オウム返しして、那子がクスクスと笑った。
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