雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
「でもさ、気付かれずに店出るの難しくない?」


 那子の言う通り、レジに向かうには、功の座席の横を通りすぎなければならない。


「彼女と一緒みたいだから、何も言ってこないかもよ? 下手に避ける方が不自然だし、何てことない顔してたら?」


「それも……そうだね」


 思わず条件反射で隠れてしまったものの、夏成実は何も悪い事などしていないと思い直して、立てかけていたメニューを閉じた。もし何か言われたら、彼女の前だろうが何だろうが、この間の様に言い返してやろう。そう意気込んで功を見ると、早速目が合った。

 ――!!

 でもすぐに功の方から逸らされて、夏成実は何だか肩透かしを食らった様な気分になる。

 ――チビザルのくせに、彼女の前では透かしちゃって!

 つっかかってこない功にホッとしながら、思わずそんな悪態を心でつく夏成実だった。
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