雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
「変なヤツ」


 言いながら立ち上がった匡に、萌果も負けじと言い返す。


「その台詞、そっくりそのままお返ししますっ」


「それは、どうも」


 飄々とした態度の匡に、萌果はこれ以上言い返すのを諦めた。自分も帰ろうと匡に背を向ける。


「今日は一緒じゃないんだな」


「えっ?」


 萌果が振り返ると、大きなスポーツバッグを肩に担いで匡がこっちに歩いて来た。


「平野」


「あぁ、今日はちょっとね」


「寂しそうな顔して」


「寂しそうって、伊万里が?」


「ちげーよ、お前が」


「え?」


 それはどういう意味かと訊きたかったが、萌果はただ匡の顔を見上げるしか出来なかった。


「電気消しとけよ」


 匡はスポーツバッグを担いで教室を出て行き、一人取り残された萌果は、じわじわと怒りがこみ上げてくる。何よアイツ! とイラつきながらも、言われた通り電気のスイッチをオフにしてから、教室を後にした。
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