雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
それぞれの夏が始まろうとしていた
 期末テスト前日、伊万里はカバンを持って立ち上がった。


「伊万里ー、帰ろ」


 駆け寄ってきた萌果に、伊万里は両手のひらを会わせごめんのポーズを取った。


「今日はちょっと……」


「えー、そうなの? 一緒に帰れないの?」


「うん。ごめんね?」


 萌果は頬を膨らませたが、それは一瞬で、すぐ笑顔になる。


「わかった。気を付けてね?」


 伊万里はそれに頷いてから、大事そうにカバンを抱え教室を出て行った。残された萌果は、くるりと周りを見回す。

 ほとんどの生徒がさっさと帰って行く中、匡が席に座ったまま、スマホの画面をぼんやりと眺めているのが目に入った。それをなんとなく見ていると、視線に気付いた匡が萌果の方を見た。

 お互い無言のまま、なんとなく見つめ合う。


「……なんだよ」


「別に」


 無愛想な萌果に、匡はフッと笑みを浮かべた。
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