雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
「新太にしては珍しく、今回やけに慎重じゃん?」


 帆鷹は漂った空気を軽くするように、薄く笑って訊いた。


「伊万里ちゃんの場合、ガーッとこう攻めらんないってか……自分でもよくわかんねぇんだけど……」


 帆鷹に説明しながら、自分でもよくわからない心情に、新太は頭をわしゃわしゃと掻き、小さな溜め息を漏らす。すぐに告白して付き合い出すというのが新太のパターンなのに。それが何故か伊万里とは、なかなか進展せずにいた。伊万里がそうさせないというより、新太もそれを望んでいる様なところがあって……。そんな自分自身に、新太は秘かに一人悩んでいた。


「それだけ好きって事じゃね?」


 冷やかすでもなく、真顔で帆鷹に言われ、新太はキョトンとする。
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