雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
 いつもより足早に歩きながら、苛立ちが募る。バイトの面接に行ったはずが、何でこんな事に!?

 同じ学年のチャラ男に、秘密を知られ……訊いてもないのに、携帯番号を教えられ……もっともらしい理屈で、自分の携帯番号を登録されて……LINEまでも……。

 学校だけでも憂鬱なのに、その上バイトまでなんて、気の休まる時がない。

 このままバイトをばっくれる事も考えた。けれど……バイトに行かなければ、秘密はすぐにばらされてしまう。

 何もなかった事には、もう出来ない。残された道は、たったひとつだ。

 この日、桜川那子は、江坂悠李に、わずかな望みをかけると決めた。
< 34 / 370 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop