雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
「そっか。でも、熱くなれる事なんて、ひとそれぞれ違うじゃん?」


「例えば、中崎は何なの?」


「え、あたし? あたしは、やっぱバスケかな」


「それと、食う事?」


「ちょ、そんな食い意地張ってないし!」


「ムキになるところが怪しいけど」


 何よこの二人……いいコンビじゃない。千咲希はそう思ってふとスマホを取り出した。


「ねぇ、写真撮ってあげるよ。もうちょっと寄って寄って!」


 スマホのカメラを構えた千咲希は、帆鷹と穂香を画面に納めようとする。


「だったら、三人で撮ろう! 誰かに撮ってもらおうよ」


 照れ隠しなのか、そう言う穂香を抑えて千咲希は二人にスマホを向けた。


「まずは二人で! 海をバックに、はいチーズ!」


 やる気ない表情の帆鷹の隣で、満面の笑みでダブルピースする穂香。


「後で送るね」


「うん、ありがとう!」


「俺にはいいから」


 「なんで!」と怒る穂香と素知らぬ顔の帆鷹を微笑ましく見つめながら、千咲希は軽く空を見上げた。沖縄の空も海も、青くて美しい。目にしみる程の青さだ。

 甲子園出場を賭けた決勝戦で、匡が投げたあの日の空ーー。

 それを思い出し、千咲希は眩しさに瞼をぎゅっと閉じた。
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