雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
「今宮、絆創膏あった」


「あ、ありがとう」


「ちょうど靴擦れ用のやつがあったから」


 受け取ろうとすると、匡は「ん?」という表情で首を傾げた。


「座れ。貼るから」


「え、いいって! それくらい自分で出来るし!」


「こういうのは貼り方が大事なんだ。俺は野球部で嫌って言うほどやってきた。素人じゃすぐめくれちまう」


「でも……」


「いいから座れ」


 萌果もそこまで言われると、おとなしくなる。炊事場の端にある石垣に腰掛けると、匡は手際よく絆創膏をめくり、慎重に萌果の踵にピッタリと貼り付けた。


「たぶん、ずれてこないはずだから」


「うん、ありがと」


 すると匡は立ち上がり、今度は功の元へと向かった。
< 79 / 370 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop