雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
「うちの班でまずいカレー作るなんて、絶対に許さんからな」


 萌果は思わず伊万里と顔を見合わせた。


「うちの班長、食に対するこだわりすげーから」


 功は楽しそうに言ったが、萌果は匡という人間がわからなくなっていた。無愛想なのか、優しいのか。不器用なのか、器用なのか。

 結果、出来上がった五班のカレーは絶品だった。匡はスパイスが足りないなどと納得いかない様子だったが、各班のカレーを食べ比べた担任のサンジは、匡達五班が優勝だと言った。


「なんか、いろいろあったけど楽しかったね」


「うん」


 帰りの下り坂は、匡の貼ってくれた絆創膏のおかげで、萌果は普通に歩く事が出来た。それを思い出すと恥ずかしさが込み上げる萌果だったが、悪い気はしなかった。口調は優しくないけれど、行動は優しい匡。


「早く帰って、お兄ちゃんに話したい!」


 ――萌果はやっぱり萌果だ。

 伊万里はクスクスと笑いながら、そんな事を思った。
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