雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
 ――桜川!?

 見知った顔に驚いて、律樹の眉がピクリと動く。

 ――桜川って、ピアノなんか弾けたんだ

 普段の那子からは全く想像も出来なくて、律樹の胸に驚きと関心が入り混じる。

 律樹に気付く事もなく、那子はピアノを弾き続けていた。

 このまま引き返そうと思った律樹だったが、ふとその足を止める。もう少しだけ那子の弾くピアノを聴いていたい気持ちになった。

 音楽室前の大きなガラス窓からは、昼下がりの太陽に照らされた新緑がサワサワと風に揺れている。静まり返った校舎には、その音さえ聞こえてくるようだった。

 律樹は音楽室の外の壁に凭れながら、心地よいピアノの音色に、そっと目を閉じた。
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