雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
意外すぎる出会いは夜のライブハウスだった
 中間テストが終わって迎えた日曜日。伊万里(いまり)は夕方から出かける準備をしてそわそわしていた。

 今日は待ちに待ったライブの日だ。ライブと言っても、インディーズで知る人ぞ知るバンドのもの。


「はぁ……」


 伊万里は自室の壁に貼られたポスターを見て、大きく息を吐く。

 『Fate(フェイト)』は男性四人組のロックバンドで、黒革の眼帯をした美形のボーカルが人気を集めていた。いわゆるヴィジュアル系である。

 伊万里がFateに出会ったのは中学生の頃だった。当時の伊万里は今のようなコミュ障ではなく、ごく普通に中学生活を楽しく過ごしていた。そんな日々に陰りが差したのは中二の秋頃。

 ある日突然、理由もわからず友達に無視されるようになった。最初は数人のグループだったが、やがてクラスの女子全員が伊万里を避けるようになった。唯一信じていた親友にも裏切られ、伊万里は誰も信じられなくなり、人と話す事すら怖くなってしまったのだ。
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