隣に住むのは『ピー…』な上司
手を横に振り、拒否を示す課長に食い下がる女性。
表情は深刻そうで、すごく困っているみたいです。


(何が起きたの?お願い事でもしてる?)


仕事の相手だろうか?
それとも別の知り合い?



(まさか……)


歩き出した二人を追いかけようとした足が止まった。
心に浮かんできた良くない思いが、私の行動を止めました。



(この人が……もなちゃんのお母さんじゃ……)


ドクン…と鈍い心音がして、足が重くなってしまった。

課長がカンタンにしか話さなかった女性が、もしもあの人ならーーー




(私が替われる気がしない)


あんな美人でも色白でもない。
背も低いし、足の甲だって高くない。
スレンダーな服は間違っても着れない。髪だって、あんなにクルクルとキレイに巻けない。



(それに私、まだ課長を受け入れてもない……)


子供ができるほど深く愛し合った経験もないし、これからだって課長を受け止められるか自信もない。

キスだって今だにビクビクする。

課長が近づいてくる度に心臓が飛び出しそうな程ドキドキ鳴る。



何もかもが違う。

あの人のように私はなれないーー。




(課長……)



小鳥は返したのに、どうして一緒に行動しているの。
私と付き合い始めても、やっぱりその人が要る?


血を分けた分身を産んでくれた女性だから?
私が課長を受け入れないから?


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