隣に住むのは『ピー…』な上司
うっそぉ、初めて知った。


「診るよ。でも、場所が限られる」


課長が言うには、バード・ドクターというのは数少ないらしい。


「この辺にはいないんだ。隣の市に行かないといけない」

「はぁ。遠いですね」


電車だと片道1時間はかかる。往復するとなると2時間以上はかかるだろう。


「君が連れて行ってくれないか?」

「えっ。私が!?」


なんで。
…と言うか、何故!?


「俺は今日、上役たちとの会議が朝からあるんだ。飼っている鳥が風邪ひいてるからなんて理由で欠席はできない。君には急ぎの仕事はないだろう?今日の会議の資料も昨日のうちに全部作ってしまっているだろうから」


「そ、それはそうですけど……」


「だったら頼む!君しか頼る者がいないんだよー」


いきなり泣きつき!?
人柄変わりすぎじゃない!?


「あの、でも……」


しどろもどろと言い訳したくなる。

課長は私の顔を睨み、ぼそりと恐ろしいことを言った。


「この間、散々世話かけたのは誰だ」


身に覚えのある私は、ビクッと身を揺らした。


「あの時何かあったら言ってこいと言わなかったか?」



……言った。

確かにそう言った気がする。



「で、でも仕事が……」

「今日は風邪で休むとでも言っておけよ」


さらりとサボりを勧める。


「か、課長……?」


「頼む!ピーチが重篤化する前に早く連れて行ってくれっ!」



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