隣に住むのは『ピー…』な上司
嬉しくなって声を上げた。
その瞬間、耳元に聞こえてきた笑い声。


「くくっ」


(えっ…!)


課長が笑っている!?

電話の向こうから聞こえた声がそれを物語っている。



「あ、あの、課長!」


思わず声をかけてしまった。


「ん?」


返事する声も優しい。




「…………」


何を言うつもりだったのか忘れてしまった。
ぼうっとして、思考が止まってしまう。



「白鳥くん?」


名前を呼ばれてハッとなった。
でも、何を言うつもりだったかは思い出せない。


「…す、すみません。あの、困ったらまた連絡します!」


おやすみなさい、お疲れ様でした…と慌てて言って電話を切った。
返事が返ってくるのも待たず、ブチッと終了ボタンを押してしまった。


ブルブルと手が震えている。
怖い訳ではなく、何だか信じられなくて。



(課長の笑い声を聞いた……)


耳元で。
小さく笑いを噛み締めていたーーー



思わず耳を押さえる。
逃したくない気持ちが働いて、そんな行動を取ってしまった。


ドキドキと胸が鳴り始める。
知らなさ過ぎる人が、段々と身近に思えてきてしまう。

小日向真史という人が、どんどん心の中に入ってきそう……



(ダメダメ!)


近寄らせてはいけない。

近寄り過ぎると後が怖い。

私には忘れられないトラウマがある。

男の人は怖いんだって知ってる。


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