君がうたう七つの子
今から、久々にあの歌が聞けるのだ。

それだけで、大方の問題を水に流してもいいくらいだ。

ここに来る途中も歌っていたことは歌っていたのだが、鼻歌がほとんどだったし、ここのところはレイの姿すら見ていなかったので気分が自然とあがっていく。

でも、次の瞬間には物悲しくなる。

これが、本当の本当に、最後だと思って。

「えっと、じゃあ歌うね」

軽く咳払いをした彼女は、僕のほうを向いて一礼する。

僕は座ってから、それに小さく拍手をする。

そして、拍手を終えると彼女は目を閉じ、静かに息を吸い込んで、歌いだした。

最後の歌を、僕に


うたった



からす なぜ鳴くの からすは山に
可愛い七つの子があるからよ
可愛い 可愛いと からすはなくの
可愛い 可愛いと なくんだよ
山の古巣へ いってみてごらん
丸い目をした いい子だよ

僕は瞬きをせず、食い入るように彼女の姿を見つめて、耳を澄ませて聞いた。

彼女が発する一つ一つの動作を見逃すことが無いように

彼女から溢れる音を何一つ聞き逃すことが無いように

そして―――間違っても涙を流すことが無いように






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