君がうたう七つの子
まぁ、誰と行くのかと聞かれ、流石に幽霊とも、引っ越したばかりで友人もいないので友人とも言えなかったので、一人でと言うとがっかりしたものに変わったが。

多分一縷の希望を込めて聞いてきたんだろうけど、僕にそんなものを求めるのは間違っている。

それとも、素直に幽霊の少女と言えば喜んだのだろうか。

ちょっと興味はあるが、するにはリスクが高すぎる。

下手すれば病院かお寺に連れていかれかねない。

どちらも御免被るので、きっと話すことはないのだろう。

僕の両親も含めて、誰にも。

それは寂しい事、なんだろう。

現に今、僕は少しため息を吐きたい気持ちになった。

今更そう思っても、この関係をやめる気にはならないけど。

そんなことを約束の場所に向かいながら考える。

約束の場所と大げさに言ってみたものの、場所はいつもと変わらない。

あの土手だ。

彼女曰く、あそこは中々の穴場らしい。

しかし、穴場というには似つかわしくない程毎年人が多いらしいが、今年は誰もいないだろうとのことだった。

理由は言っていなかったけど、聞かなくてもわかった。

彼女の事故があったから。

だから、今年は穴場という名前にふさわしい場所になるのだ。

そして、そこで彼女と花火を見る際の約束事も言われた。

『決して、下に降りないこと』

これは強く言われた。

何度も、繰り返して確かめるように。

あまりに煩いので理由を今度は聞いてみると

『危ないから』

と一言だけ言った。

正直もう少し詳しく聞きたかったが、遅まきながら途中で、あそこは彼女が亡くなった場所なのだと気づいてやめた。

未だに彼女の事故の詳細は知らない。

彼女には勿論聞けないし、調べることも出来るんだろうけど怖くてできない。

僕はこんなに臆病だったっけと過去を振り返ってみたものの、彼女の様な類例が探しても、掘り返しても無かったので結局不明のままだ。

そりゃあ、生き死にに絡むような人とそう関わる事も無いか。

霊感が多少なりとも僕にあったのなら、それか生き死にに深く関わる職業の両親の子供ならいざ知らず、僕は幽霊なんて見えたのはレイが初めてだし、両親もそういうことに関わることのない職業だ。

よって、彼女とのやり取りに経験から基づく行動なんてとれもしないし、過去を振り返っても何も出てこない。

逆に言えば、だからこそ彼女と過ごすことが刺激的で、面白くもあるのだろうけど。

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