毛づくろう猫の道しるべ

10

 無数の目がじっと私を捉えている様は、恐怖を植え付け私の体を極度に緊張させた。

 慄きながらごくりと喉を鳴らして息を飲む。

 一体何が起こってるんだろう。

 ずらっと男子ばかりいる目の前の光景が怖くて、気絶しそうに顔面蒼白になっていた。

「千咲都ちゃん、大丈夫かい? 魂が抜けてそうな表情だな」

 魂が抜けてる? 

 はっとして、ぽわーんと半開きになった口を慌てて押さえこんだ。

「あ、あの、一体なんの御用でしょうか」

 気を取り直して話すも、声が裏返ってしまう。

 そんな様子を草壁先輩は微笑んで、そして側に居た人に問いかけた。

「ね、どう思います、宗谷(むねたに)先輩、中々いい子でしょ」

 宗谷先輩といわれた男性は、顎に手を当て、お決まりの考え込むしぐさで私をじろじろと見つめていた。

 浅黒い肌で、いかにもスポーツマンといったがっちりとした体格だった。

 ここいる男子生徒の中でも一段と大人びて、まるで狼のように鋭い目を向けて抜け目がない。

 見るだけで貫禄があり、存在感がありありとしている。

「初々しくて、すれてなさそうなところが好感持てる」

 みんなの視線がずっと私に集まったままだった。

 それが恐ろしくって、私の足がガクガクと震えだした。

「あ、あの、私、何かしましたでしょうか」

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