毛づくろう猫の道しるべ

 下駄箱で靴を履き替えようと中を覗き込んだとき、そこに四つ折にされた紙が入っていた。

 それを取り出し読んでみれば、ネチネチとした嫌がらせの文章と、最後にまた『桜井』と名前が入っている。


 今度は、心得がなっていないやら、わざとボールに当たって同情を買ったやら、恨みつらみと続き、草壁先輩に近づくなとやっぱり前回と同じような文面で警告している。


「一体誰が」


 草壁先輩と橘先輩の証言を元に考えたら、これは櫻井先輩でも常盤先輩の仕業でもない。

 内容を読めば、サッカー部の中で起こったことを知ってる人にしか書けない文面であり、そして私の事を嫌っているというキーポイントを照らし合わせたら、容易にその犯人がわかった。

 加地さんだ。

 何も櫻井さんの名前を語る事ないのに、余程この人も常盤先輩と同じようにぶっ壊れた性格の人のように思えた。

 しかし、どちらも卑怯極まりない。

 なぜこんな事をして自ら自分を貶めるのだろう。

 程度が低くなると思わないのだろうか。


 目の前に嫌いなものがあれば、人間は攻撃性が高まり理性がなくなって我を忘れてしまう。

 こういう人間に絡まれた時が一番やっかいでならない。

 対処法を間違えたらえらいことになりかねないと思った時、一年生で先にサッカー部のマネージャーを辞めた人が居ることを思い出した。

 私は、その人が誰だか知りたくて、職員室に向かった。

 挨拶しただけで、まだあまり話した事はないけど、サッカー部の顧問をしている先生のところへ向かった。

 名前もすぐに出てこなかったけど、顔を見たら分かるだろうと、適当に中に入って探していたら、不審者だと思われて声をかけられた。


「どうした。キョロキョロして」

「えっ、あの、そのサッカー部の顧問担当の先生を探してるんです」

「ああ、武藤先生か。うーん、まだ来てないみたいだね」

 教室を見渡しているその顔には見覚えがあった。

 この人、近江君と喋ってた、確か江坂先生とかいうんじゃなかったっけ。

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