毛づくろう猫の道しるべ
慌てて再び部室に戻れば、加地さんが来ていて、宗谷部長に何かを話しているところだった。

 部長は難しい顔をして、腕を組んでいた。

 草壁先輩も、眉間に皺を寄せて考え込んでいる。


「仕方がないな。そういう事もあるさ」

 宗谷部長の声が部室に響いた。


 何が仕方がないのだろう。

 私が突っ立っていると、加地さんが私の側に来て冷たく言い放った。


「ほら早く皆に謝りなよ。あなたのせいで、練習場所が確保できなかったんだから」

「えっ? 私のせい」


「私もあなたに任せてしまったのが悪かったけど、自分でするって言ったんだから責任もたなくっちゃ」

「どういう事? それって加地さんが言ったじゃない」


「今度は私になすりつけるつもり? 私も確認しなかったのは悪かったわ。だけど今は誰のせいとか言ってる暇はないでしょ。まずは迷惑掛けたこと謝らないと」

 何かがおかしい。

 加地さんは完全に私のせいにしてるが、あの時確かに加地さんは自分でしておくと言ったはずだ。


 しかし、沢山の部員の前で、言った、言わなかったの罪の擦(なす)り付けは醜かった。

 私は素直に頭を下げた。

「すみませんでした」
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