毛づくろう猫の道しるべ
 後に近江晴人(おうみはるひと)と彼の名前を知ったとき、自分が遠山の苗字なだけに、反対語が入ってるし、何か因縁を感じる。

 それだけじゃなく、私が彼の事を気にして見たのも、時々目が合ったり、更には彼が不意に話しかけてきたことがあったからだった。

「お前、猫飼ってるのか?」

「えっ?」

 たまたま彼の席の近くを通って目が合ってしまい、私は何事もなかったように視線をそらしたとき、ボソッと聞こえた。

 暫く動きが止まって固まっていると、近江君が自分の制服の袖をはたくふりをした。

 思わず、自分の袖をみたら、ブンジの毛がついていた。

 朝出かける前にブンジを撫ぜていたときに付着したらしい。

「あっ」

 その毛を慌ててはたいたが、どうしていいのかわからない。

 とりあえず知らせてくれたことで「ありがとう」とお礼を言った。

 だけどもしかしたら猫アレルギーで、それで猫の毛に敏感だったのかもしれない。

 そんな事も考え、この状況をどうしていいのかわからなかった。

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