毛づくろう猫の道しるべ

 ブンジと最後のお別れをして家を出た時は、すでに登校時間には間に合わず、遅刻すると分かっていた。

 それもまたどうでもよいことだった。

 案の定、担任がすでにホームルームをしている時に、私は教室に入った。

 クラス全員から注目を浴びたけど、何も感じず堂々とふてぶてしく席に着いた。


 以前の私なら、恥かしくコソコソとして遠慮がちに身を丸めていただろうけど、そんな事をする方が笑われるというものだった。

 先生から、何かあったのかと言われたが「いいえ」とそっけなく返し、鞄から筆記用具、教科書、ノートを出すことの方に集中した。


 希莉が振り返り私を見ていたような気がするが、もちろん無視する。

 どうせ、愛想笑いしたところで、何の反応もないのだから、視線を感じて振り向くのも邪魔くさかった。

 一時間目の授業が終わったところで、柚実が希莉を引っ張って私の前に現われた。

 私は無表情に顔を上げ、じっと交互に二人を見据える。


「何かあったの、千咲都。遅刻も珍しいし、雰囲気もいつもと違う」

「悪いけど、一人にしてくれる。どうせ何を言ったところで、私達は仲たがいしたままだし、もう疲れたの。それなら無視してくれていいから」

「どうしたの、千咲都」

 柚実は酷くびっくりし、口を半開きにして動揺していた。

 希莉も驚いていたが、何かを思案する様子だった。

 迷った挙句声を掛けてきた。

「千咲都、何があったの?」

 私は思わずキッと希莉を睨みつけていたように思う。

 急に声を掛けてきたことが受け入れられなかったし、これ以上話をしたくなくて態度に知らずと本音が出ていた。

「放っておいて」

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