毛づくろう猫の道しるべ

 個人個人が普通の会話をしているだけなのに、教室に入り込めば意味を成さずにザワザワと雑音になって耳に届く。

 毎日が繰り返される変わらぬ朝ではあるけれど、薄暗い外のせいで、蛍光灯で照らされる教室内が物悲しく見える。

 本降りの雨の日の朝の教室は独特な雰囲気があった。

 そして私の心の中も然り。

 こんなじめじめとした日に厄介ごとをしないといけないなんて、それだけでもついていない。

 バッグを机に乗せて椅子に腰を下ろせば、ついため息がこぼれた。

 焦点が定まらないまま、虚空を仰ぐ。

 鞄の中には例の手紙が入っている。

 しかもブンジのゲロまみれという代物。

 鞄を開けてもう一度それを確認し、そして辺りを見回した。

 希莉はこの時まだ来てなかった。

 いつ来るのだろうと教室の入り口を気にしては、暫くの間、人が入ってくる度に一々ドキドキしてしまう。

 先に柚実が姿を現した事が、少し救いになった。

 目が合うや否や私達はニコッと微笑んだ。

 柚実は迷うことなく私の側にやってきてくれたことが嬉しい。

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