スワロウテイル
3.ここではないどこか
思い返せば、私はいつだって『ここではないどこか』を探していた。

自分らしく生きられる場所を見つけよう。テレビ画面の中や雑誌の誌面に溢れているそんな耳障りの良い言葉を間に受けて、あの家から、あの町から、逃げ出すことばかり考えていた。

自分を取り巻く環境さえ変われば、全てがうまくいく。そんなどうしようもない幻想を抱いていた。


だけど、今ならわかる。

『どこか遠くへ行きたい』

そんな気持ちは帰れる場所がある人間だけが持てるものだ。私にはちゃんと帰る場所があった。

いつだって、私の帰る場所は苦手だったはずのあの何もない田舎町。あの優しい笑顔の隣__。



あの頃の私はひどく愚かだ。だけど、抱きしめてあげたくなるほどに愛おしい。
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