さよならはまたあとで
手の中にぽつんと残された名刺を見つめる。
「ふふふ」
不意に笑い声が聞こえて私はくるりと振り返った。
葛城だと思ったその声の主は、ファッションショーの時、私たちを助けてくれた、あの人だった。
茶髪のキノコのような頭を風にふわふわさせながら、その人は立っていた。
「あ、あの…さっきは、ありがとうございました」
私はとりあえず言い損なった礼を言う。
「んー、さっきぃ?なんのこと?」
彼はまた「ふふふ」と笑った。
この人…なんだか掴みにくい…!!
「ゆーえさぁ、小学生の頃の夢、覚えてるー?」
さぁーっと、この季節にしては珍しく、涼しい風が吹き抜ける。
「え、」
私は言葉に詰まってしまう。
「ふふふ、あのね、優恵はモデルになりたかったんだよ…なーんて言っても覚えてるわけないか」
ゆらゆらと彼は歩き出した。
私のすぐ鼻の先まで近づくと、膝を折る。
彼の目線が、私の目の高さになる。